7
ケリをつける。
拓にそう告げてから、2日目の夜…
拓は男を連れて来てくれた。
男は何をどう聞かされたのか知らないが、気に入らねぇってゆう目つきをしてやがる。
拓は男を病室へ入れて、すぐに部屋を出て行った。
一対一で話しをしたいと、拓には言っていた。
正直、脅しあげてでも彼女と別れさせようかと思った事もある。
でも彼女の為と思い、待つ事を選んだ。
一発殴ってやろうかなんて、生易しい感情じゃない。
だけど、病室の外に居る拓に見張られているのは、この男だけじゃない。
後先考えず、自分が道を外れないように。いつだって拓は見張ってくれていた。
彼女の為にも、自分自身の為にも。終わらせようと思う。
「呼び出して悪かったな」
「…別に」
「この通り、自由に動けねぇ体なんだよ」
ベッドに座ったままそう言うと、扉付近に立つ男は黙って睨みつけてくる。
その距離感は、男なりに
「おまえはすっかり良さそうだな」
ギブスの取れた足に重心をかける男は、やっぱり睨みつけてくる。
「時間ねぇから単刀直入に言うぞ」
看護師がいつ戻ってくるか分からない。
「彼女と別れろ」
その言葉に、男は無言で背競り笑う。
「別れろ?」
「そう言った」
「…ふざけんな」
「おまえ口の聞き方気をつけろ」
「…何であんたに別れろなんて言われなきゃいけねぇんだよ」
「分かってんだろうな」
「…はぁ?」
「別れなかったらおまえ、刑務所行きだぞ」
「は…?」
「おまえ俺にこんだけの怪我を負わした主犯だろ。警察沙汰になってんの知らねぇのか?」
「……」
「ガキのやる事に口出すつもりはねぇし、俺はどんな目に合っても痛くも痒くもねぇし。やり返そうとかも思ってない」
「…何言って…」
「馬鹿野郎。てめぇがやらせたって知ってんだよ」
「…な、」
「何でかって?おまえ相当バカだな」
脅したと言えば脅した事になるのかもしれない。
卑怯だと言われれば卑怯なのだろう。
「証拠がある。おまえにやられたって警察に吐くぞ」
力で
だけど、病室の外で見張っている拓が許してはくれない。
だから、
「別れねぇならおまえの人生はここで終わりだ。どうする?」
話して分かる奴だとは思ってない。話す内容で分からせるしかないと思った。
「おまえ19歳だろ?あ、もう20歳になったのか?どっちにしろ刑務所行きだ。刑務所がどんな所か知ってるか?」
黙って聞いていた男の表情が引き
ガキのくせにプライドだけは一人前にあるようで、威圧的に睨みつけてくる姿勢は変わらない。
だけどそこはガキに違いなく、世間知らずの青二才だから、それっぽい事を言えばビビって焦り出す。
「どうすんだ?別れんのか?今後二度と彼女に関わらねぇって言うんなら、今回の事は誰にも言わねぇ。墓まで持ってく。なぁ、どうする?」
言われるがままにせざるを得ないと分かっているからこそ、反論出来ない怒りが込み上げて来るようで、眉間に皺を寄せた男は拳を握り締めていた。
「何でっ…どうして彩に関わるんだよ…あんたが居なけりゃ彩は…」
「俺が居なくても暴力振るうような男なんか願い下げだろ。彼女じゃなくても誰だって同じだ。好きな女に手ぇあげる奴は最低だ。その手で守るべき相手だろうが」
男は悔しそうに唇を噛み締めた。
「どうすんだ。別れねぇならおまえ刑務所行け。そうなったら彼女どころか、ツレにも相手にされなくなるけどな」
男は少しの間を置いて、小さく「分かった…」と呟いた。それはそれは悔しそうに。
「その言葉、嘘じゃねぇだろうな?」
「分かったって言ってんだろ…」
「
「分かった…」
「俺を見ろ。脳天かち割られようが、俺の一生をかけておまえを潰しに行く」
「分かったって言ってんだろ…!」
その後は何を言っても男は諦めたように頷き続けた。
彼女の事は確かに好きだったんだろうと思う。
だけど形を変えた愛に、思いやりは存在しない。
どれだけ好きだとゆう感情を抱えていたとしても、一方的な愛情はお互いに傷つくだけ。
現にあの男は彼女に対する愛情が歪んでしまい、自分まで痛い目に合っている。
沈み返った病室の空気を切り裂くように入って来た拓は、男を連れて帰ってくれた。
帰り際に、「後は四季が退院するだけだな」と笑った。
きっと拓の事だから、あの男にも落とし所を見つけられる様に話をしてくれているんだと思う。
沈んだ男の気持ちを、納得させて帰らす筈だ。
拓はそうゆう優しい奴だから、拓に頼んで良かったと本当に感謝している。
結局、
後は退院するだけ…
拓が言ったように、後は退院するだけだった。
リハビリを繰り返し、検査をする日々が続いた。
彼女とは音信不通だったけど、彼女の事だから勉強ばかりしてるんだろうなと、安心していた。
知らせが来ないのは元気にやってる証拠だと、じいちゃんが言っていた言葉を思い出す。
主治医から退院して良いと言われたのは、それから更に3ヶ月とゆう月日が経っていて、季節は春が間近に迫っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます