彼女を最初に見かけたのは、会社へ行く道中の事だった。



春が目前に近づく頃、赤信号で止まると、寒さに身を縮めながらバス停に並ぶ人達が目についた。



毎日通っていたから、何気なくバス停を見た事は何度もあったし、だいたい毎日同じ時間にここを通るから、そのバスに乗る人もだいたい同じで、乗客のおっさん何人かの顔を覚えてたりする。



だからって街ですれ違っても絶対分からない。


それぐらい無意識に覚えている感じだった。



そんな春先、バス停に立っている高校生を見かけた。


いつも居たのか、いつもは居なかったのかすら分からないぐらい、ふとその子が目についた。



雪のように白い肌をマフラーで覆うように隠し、黒く長い髪を冷たい風が揺らしていた。

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