第25話
「何聞いてんの?」
「っ、えっ!?」
驚いて起き上がった私を気にすることなく、ユウマくんは外したイヤホンの片方をそのまま自分の右耳に持っていった。
「…へぇー、ハルってこういうの聞くんだ?意外」
「何してるのっ!?」
「へ?何って?」
「だっていきなり家の中にっ———…」
そこまで言ったところで、私は先日おばあちゃんが“小学生の頃はよく来ていた”と言っていたのを思い出した。
勝手に家に入っちゃうくらいの関係性ということか…
「や、何でもない…ちょっとびっくりして…」
「何度も声は掛けたんだけど、鍵開いてんのに返答がないからどうしたもんかと思って」
「そっか…なんかごめん…」
「いや、こっちこそごめんな。たしかに着替えてる最中とかだったらヤバかったよな。次からは気をつける」
「うん…」
「ばあちゃんは?」
「あぁ、えっと…サカエさん?とかいう人のところに行った」
「あぁ、はいはい、分かるよ、俺」
ユウマくんはそう答えながらようやく耳からイヤホンを外して私に差し出したから、私はそれを受け取りながら依然左耳に引っかかっているイヤホンもすぐにそこから引き抜いた。
「あの人話長いし、ばあちゃんもばあちゃんで話し出すと止まらないからたぶんしばらくは帰ってこないだろうな」
「うん、本人も遅くても夕方には帰るからって言ってた」
「そっか」
こんな会話をする今の時刻はようやく十三時を回ったところだ。
おばあちゃんの言う夕方はきっと十七時か、十八時か…まだまだ外が明るいことを思えばもっと遅い時間でもありえるだろう。
「ユウマくん、どうしたの?」
「あぁ、そうそう。俺ら今からまた海行くんだよ。この前と似たようなメンツで」
「あ、そうなんだ」
「ハルも行く?」
「えっ!?」
まさかまた誘ってもらえるなんて思いもしていなかった私は、思わず大きな声で反応してしまった。
「暇かなーと思って誘いに来たんだよ。どうする?行くならまた後ろ乗せてやるけど」
それはきっと自転車のことを言っているのだろう。
同時に、ユウマくんは右手の親指で背後を指し示していた。
「行くっ…!!」
迷いなんてあるはずがなかった。
だって四日前から今日まで、私はあの海で遊んだ日のことを何度思い返したか分からない。
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