第24話
ユウマくんにはシロちゃん以外の兄弟はおらず、家族四人であの大きな家に住んでいた。
私達が挨拶を済ませて帰るまでの間、ユウマくんとシロちゃんのお父さんとお母さんは一度も目を合わせておらず、なんならお互いがお互いを視界に入れないようにしているみたいな空気があって私は妙にドキドキした。
そんなのは私の考えすぎだろうと思っていたけれど、
「ユウマもシロウも、小学校の頃は何かあるとうちによく来てたんだよ。何度もご飯を食べさせてあげたりしたっけなぁ。最近は全然だけど」
おばあちゃんがそんなことを言ったから、あの夫婦には何かしらあるのだと子どもながらに思った。
「じゃあおばあちゃんも二人のことはよく知ってるんだ」
「うん、そう。ユウマは昔っから正義感が強くていつも自分より人のことばっかり考えてるからちょっと心配。でもシロウもシロウで、繊細で傷つきやすいくせに一人で溜め込んですぐに人との間に壁を作る癖があるから心配なんだよ」
「そうなんだ…」
私は漠然と、その様子からおばあちゃんはその“何かしら”を知っているのだと思った。
それから四日後、
あまりに暇すぎる私は居間の畳の上で仰向けになってひたすら携帯の音楽をイヤホンで聞いていた。
おばあちゃんは近所の人のところに遊びに行っちゃったし…一昨日と昨日は散々辺りを散策したからこの辺のことはもう何となく分かったし…
この街はどの向きに進んでもあまり変わり映えのない景色が続くばかりだった。
印象的なものといえばあの大通りをひたすら北に進んで見えてきたお城のような建物くらい。
あれはおそらく美術館だ。
美術に全く興味のない私はそれを察するとすぐに満足感を得てしまい、そこに辿り着く前に家へとあっさり引き返した。
四日前に海に行った時はあんなにあっという間に夕方になったのに、それからの毎日は時間が経つのが遅すぎる。
一日五十時間なんて私には耐えられないや…
私は目を閉じて、もう何周したかも分からない携帯のプレイリストをひたすら繰り返していた。
どの曲の歌詞も覚えたし、間奏の間に挟まれるフェイクがどんなものかだって完璧に頭に入っている。
いつのまにか聞くというより知っているその流れを復習するように頭の中で追いかけていた私だったけれど、今流れている曲がちょうど転調する部分に差し掛かった時、右のイヤホンが突然ピッと私の耳から離れていった。
その勢いに“落ちた”わけではないと分かった私が仰向けのままパッと閉じていた目を開ければ、真上にはなぜかユウマくんの顔があって私は思わず目を見開いた。
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