第22話
『プルルルッ…プルルルッ…プルッ…もしもし!?』
「あ、もしもしおばあちゃん?ハルナだけど。ごめん、電話全然気付かな」
『あんった、今どこで何してんのよぉっ!!??』
「っ、ごめんっ!今私海から帰っててっ、」
『はっ!?海って!?』
「近所の中学生と仲良くなって海で遊んでたの!ごめん、夢中になってて携帯見てなかった!」
『ったくもうっ…何時間経っても帰ってこないし、電話も繋がんないから心配したでしょうが!!!今まさに警察に行こうとしてたとこなんだから!!』
「ごめんっ…!」
『本当にもうっ…心臓止まるかと思ったわ…!!』
なかなか怒りの収まらないおばあちゃんをなんとか宥めて通話を切れば、目の前にいるユウマくんが少し笑いながら「めちゃくちゃキレてたな」と言った。
「聞こえた?」
「若干。あとなんか、隣の家のばあちゃんに声が似てた気ぃした」
「へぇ。まぁおばあちゃんの声なんてみんな似たようなもんだしね」
「たしかに」
何気なくそんな言葉を交わした私達の家が隣同士だと知ったのは、それから十分ほど後のこと。
おばあちゃんの家の前に着くなりユウマくんは隣の大きな家を指差しながら「俺ん家ここなんだけど」と言い、そんなユウマくんに私は「そうなの!?」と驚いた声を上げた。
「すごい偶然じゃん!」
「な。声が似てると思ったのは勘違いじゃなかったか」
「本当だ、すごい!でもよかった。知ってる人ならおばあちゃんも安心だろうし」
「だな。俺の名前言えば、ボケてなけりゃばあちゃんもすぐ分かるよ」
「うん、じゃあ遠慮なく名前出させてもらうよ」
「ん、」
「今日はどうもありがとう」
「うん」
「じゃあまた」
「おう」
それからすぐに家に入ろうと反転したけれど、引き戸に手を伸ばしたところで後ろから「ハル!」と名前を呼ばれて私はすぐにまたそちらを振り返った。
「まだいたんだ!もう帰っていいよ?って言ってもまぁ隣だけど」
「大丈夫だからな」
「えっ?」
「親がいなくてもばあちゃんがいるし、今日いた奴らも俺ももうお前のことは友達だと思ってるから。お前は絶対に一人じゃない」
ずっと頭のどこかにあった漠然とした不安を、ユウマくんは私が自分で自覚するよりも先に口にした。
そうだと分かった時、私は純粋に“あぁ、それだ”と思った。
きっとずっと、誰かにそう言ってほしかった。
初対面の相手に素でそれを言えちゃうってすごいな…
「絶対また遊ぼうな」
「うん…!」
ユウマくんは人が強がって隠している弱さにちゃんと気付くことができる、そういう優しさを持った人だった。
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