第18話
「みんなのとこに戻らないの?」
「…戻るけど」
「けど?」
「そういや聞いてなかったと思って」
「え?」
「名前なん」
「おーい、シロー!」
突然聞こえたその声にお互い同時にそちらを見れば、さっきまで向こうにいた一年生の二人がちょうどこちらにやって来ていた。
「抜け駆けすんなよー」
「はぁ?そんなんじゃねぇって。てかモンちゃん十分モテるだろ」
そう言った“シロウ”に私が「モンちゃん?」と聞けば、すぐに「コイツは苗字が猿渡だから」と教えてくれた。
モンちゃんは顔が今話題のダンスグループの一番人気の人によく似ていて、私も内心“たしかにモテそうだ”と思った。
「俺は小倉っていうんだけど、」
「じゃあオグちゃん?」
「そう!みんなそう呼んでる!すげぇ!」
オグちゃんは底抜けに笑顔が明るくて、目元の小さなホクロが印象的な短髪の男の子だった。
「モンちゃんとオグちゃんときたら———…シロちゃん?」
ほんの出来心でそんなことを言った私に、“シロウ”は予想以上に嫌そうな顔で「はぁっ?」と言った。
それが私にはとにかく面白くて、しばらくお腹を抱えて笑った。
もう決まりだ。
私、絶対に“シロちゃん”って呼ぼう…!
「そっちは名前何?」
私にそう聞いたのはオグちゃんで、その瞬間私はついさっきシロちゃんがまさにそれを私に聞こうとしていたことを思い出した。
だから反射的に「あ、」と言ってそちらを見たけれど、シロちゃんはわざとらしく私から目を逸らした。
それはもういいってことかな…
「ハルナです」
「ん、了解」
「この辺なら学校も一緒だしよろしくね」
そう言って手を差し出してきたモンちゃんに、私はすぐにその手を取ってしっかり握手を交わした。
ちょうどそのタイミングで、ザクッザクッと大きな足音を立てながらシロちゃんがどこかへ歩き始めた。
「え?シロウどこ行くんだよー」
「喉乾いたからジュース買ってくる」
「あ、じゃあ俺もー!」
オグちゃんがそそくさとシロちゃんに着いて行ったから、残された私とモンちゃんは当然のように二人きりなった。
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