第15話
「ユウマくん!弟何なの!?」
「あははっ、まぁアイツはそういう奴だから」
「全っ然分かんないんだけど!」
「悪い奴じゃないから仲良くしてやって」
私と話しながらもユウマくんは軽くアキレス腱を伸ばしていて、その表情は早く海に入りたくてウズウズしているようだった。
「そりゃあ仲良くなれるならなりたいけど…」
「なれるよ。同い年じゃん」
「理由それだけー?」
「十分だって。よしっ…じゃあ俺らも海行くけど」
どうやらすでに履いていたズボンは海パンだったらしい。
「あ、私のことはお構いなく」
私のその返事が合図にでもなったかのように直後三年生達も一気に海へと走り出し、ユウマくんは一瞬で髪の毛までびしょ濡れになっていた。
楽しそう…
今日初めて会った人ばかりなのに、みんなの笑う顔を見て声を聞いていれば私まで少し楽しくなった。
はぁ…それにしても初対面の女の子に“ババアみたい”って…
ユウマくん達から少し視線をずらせば一年生組の三人は大きな浮き輪のボールを投げたりしていて、その中にいる“シロウ”もそれなりに笑っていた。
心を許した人しか相容れないタイプかな。
「断れなかったのか?」
突然声をかけられて「えっ?」と言いながら右を見れば、大きな三年生の木戸くんだけがまだそこにいた。
あ、いたんだ…日傘で見えてなかった…
「ユウマ、アイツたまに強引なとこあるし無理に連れてきたんじゃねぇかと思って」
「ううん、全然そんなんじゃないよ」
「ならいいんだけど。腹減ったらあっちにいろいろ売ってるとこあるぞ」
「ありがとう。木戸くんも海行ってきていいよ」
「おう」
それからすぐに木戸くんも海へ行ったことで、私はまた一人になった。
こっちの人は敬語とかあんまり気にしない人が多いのかな。
ていうか結局一人になっちゃったし…
足元に目をやれば、履いていたサンダルの爪先部分が少し砂に沈んでいた。
海の砂ってこんなに柔らかいんだ。
それにしっとりもしてる。
グリグリとつま先を左右に動かして更に沈めれば、砂の冷たさがじんわりと私の足先を覆った。
砂が熱いのは表面だけなんだ…
こんなに暑いのに、不思議…
「海入んねぇの」
突然不躾に投げられたその声に足元から顔を上げれば、いつのまにか私の目の前には“シロウ”がいた。
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