第13話

堤防の内側にある階段を降りきって砂浜へと足を踏み入れれば、ユウマくんは自然な流れで私の手首から手を離した。


砂浜に照り返す太陽の光は日傘を差していたって眩しくて、歩きながらふと海の方へ目をやればキラキラと光る水面が鮮やかな青を放っていた。



海水は絶対透明なはずなのに、どうして海の色はこんなにもしっかり青く見えるんだろう。



ユウマくんに着いて行くようにひたすら歩くと、気付けばさっき見えた五人組はもう目の前にいた。



「ユウマなんで女子連れてんだよ」


五人の中でも一際ガタイのいい大きな人がそう言えば、他の人達も「誰!?」「ナンパしたんか?」などと続けて口を開いた。



この五人も先輩であることは一目瞭然だった。



「さっきそこで会って連れてきた」


ユウマくんは平然と答えながら手に持っていたTシャツをすぐそばに置くと、その上にズボンのポケットから取り出した携帯と財布を優しく放った。


「会って連れてきた?それ意味分かんなくね?」


そう聞いたのも、大きな人だった。


「なんか今日引っ越してきたらしくてさ」


「だからってなんでいきなり?」


「暇だって言うから」


“言うから”って…別に私が一緒に連れて行ってって言ったわけじゃないのに。



それからすぐにその五人に軽く自己紹介をされたけれど、私は全員が三年生であることとユウマくんとまともに話していた大きな人が“木戸”という名前であること以外は全く頭に入ってこなかった。


「ねぇ、どこから来たん?」


「都内から」


「マジかよ!すげぇな」


「名前は?」


「ハルナです」


「彼氏いんの?」


「バッカ、そんなこと初対面で聞くんじゃねぇよ」


「そうだよ。まずは好きなタイプから聞け!」


「違う、違う。休みの日は何するんですかーって」


「お前はお見合いかよ」



やけに盛り上がるお友達たちをよそに、ユウマくんは辺りをキョロキョロと見渡していた。


「あれ?シロウは?」


ユウマくんのそれに答えたのも、やっぱり他の四人とは違ってどこか落ち着いた様子の木戸くんだった。


「一年はみんなあっち」


指を差された方向は海で、そちらを見たユウマくんはすぐに「あ、いたいた!」と嬉しそうな声を上げた。


後輩なのに同級生よりもテンションが上がる“シロウ”って一体———…



「おーいっ!シローっ!!!」


ユウマくんが大きな声で名前を呼んで右手を挙げれば、腰くらいのところまで海に浸かっている三人がパッとこちらを振り返った。


もちろんその三人も、もれなく男だった。

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