第11話

「今更だけど何歳?」


ユウマくんは自転車を漕ぎながらも少し右に顔を向けながら私に話しかけていた。


きっと私が聞き取りやすいようにそうしてくれていたのだと思う。


それに加えて私は自転車に乗ってもなお日傘を差していたから、その内側にうまく反響して割とクリアにその声は届いた。


「十三」


「中一!?」


「うん」


「やっぱりシロウと同じだ!俺すげぇ!」 


さっきから度々出てくる“シロウ”って一体誰なんだろう。


「つうことは、俺の二個下か」


その人が独り言のようにそう呟いたことで、私はユウマくんが三年生なのだと知った。


通りで背中が大きいわけだ。


さっき自転車から降りた時だってすごく背が高かったし。



「先輩なら敬語の方がいい?」


「えっ?いや、全然!」



なんて嫌味のない人だろう。


ここまでで伝わるユウマくんの印象は、それが一番大きかった。



ユウマくんがさっき言っていたものと思われるコンビニに差し掛かった時、もう遅いとは思いつつも私は持っていた日傘を高く上げて目の前のユウマくんの頭をその影に入れてあげた。


そんな私に、ユウマくんは「一瞬で天気が悪くなったのかと思った!」と少しバカなことを言っていた。





「もうみんな来てるっぽい」


ユウマくんのその声にチラッと正面へ顔を覗かせればそこには高くそびえ立つ防潮堤があって、ちょうど正面のところにはその向こうに続くであろう砂浜への階段があった。


「回り込めばでかい駐輪場もあるんだけどさ、こっちの方が近いからいつも俺らはこっちから入るんだよね」


「へぇ…」


そのすぐそばに一塊になって置かれている自転車の所へ行くと、ユウマくんはすぐに停止した。


どうやらこの無数の自転車は全てユウマくんのお友達のものらしい。


「もう暑い!死ぬ!」


自転車を停めながらそんなことを言っているユウマくんは、自転車に鍵をかけることもなくそのまま私の手を引いて砂浜へと続く堤防の階段をスタスタと登って行った。


わっ…すごい…潮の匂いがする…


少しドキドキしながら堤防の上に立った私は、目の前に広がる大きな砂浜と絵に描いたような大きな海に思わず息を呑んだ。

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