第69話
誤魔化しきれなくなってユキのクラスに会いに行ったら、ユキはちゃんとそこにいた。
近くの人に呼んでほしいと頼んだけれど、ユキは「忙しい」と言って来てはくれなかった。
それからも私は何度もユキに会いに行ったけれど、ユキはことごとく私の呼び出しを拒否した。
遠くでユキを見つけて大声で名前を呼んでも、ユキは名前を呼んだのが私だと気付くとすぐにどこかに行ってしまうし、
廊下の先でこちらに歩いてくるユキを見つけて正面から走って近付いたって、私に気付いたユキはすぐに反転してダッシュでどこかへ逃げた。
もうこれは完全にわざと私から逃げているに違いない。
あの柴犬めっ…!!
それでも諦められなかった私は、ユキがいつも掃除の時にゴミ出しで一人になることを知りそのタイミングを狙おうと決めた。
その日ユキがゴミ箱を持って教室を出るのを見計らって、私はそのあとを追った。
ゴミ捨て場のその向こうは行き止まりで、両サイドもプールと部室に挟まれているから逃げ場はないはずだ。
そしてここまで私が追いかけてくることはないと思っているのか、ゴミ捨て場へ向かうユキの足取りはのんびりしていてかなり油断しているようだった。
ゴミを捨てて教室へ引き返そうとしたそのタイミングを狙おうと、私は慎重にそのあとをつけた。
やっぱりユキは後ろにいる私に気付いてはいなさそうだった。
「———…ユキッ…!!!」
こちらを振り返ったタイミングで声をかけようと思っていたけれど、いざその時がきたら私は焦りすぎてユキがゴミ箱の中身をゴミ捨て場に捨てている時に声をかけてしまった。
ユキはビクッと肩を揺らすと、バッとこちらを振り返った。
タイミングは予定よりちょっと早まったけれど、この場所が完全に包囲されているのは変わらない。
運良く今ここには私とユキしかいないし、もうこれを逃すわけにはいかない。
「ナエちゃんっ、…」
その声や反応から、やっぱり今までのはわざと逃げられていたのだと分かった。
「何で逃げんの!?」
「いやっ、俺は別にっ…」
そう言いながらも、ユキは逃げ道を探すようにキョロキョロと目を泳がせていた。
「逃げなくてもいいじゃんっ、私何かした!?」
そう言ってゆっくりユキの方へ近付く私に、ユキは「いや…」とか「あー…」と言いながらもやっぱり逃げる隙を伺っていた。
そして私がついにユキから五メートルほどの距離まで近付いた時、正面にいたユキは「っ、ごめんっ…!!!」と言って私の左側を抜け出ようと走りだした。
「っ、ちょっ…!!」
私はすぐに左にずれたけれど、ユキは足が速いのか制服の上着の裾をほんの少し掴むことしかできなくて、ユキの走る勢いに掴んだ裾はバッと私の手から抜け落ちてその勢いで私は思わず前のめりに倒れ込んだ。
「っ、いたっ……」
ここの地面は砂利のような少し大きめの石が敷き詰められていて、勢いよく両肘と両手をついた拍子にそこにはぐっとその石が食い込むのが分かった。
「っ、ナエちゃんっ…!!」
その声にゆっくりそのまま顔を上げると、少し離れたところで焦った顔でこちらを振り返るユキがいた。
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