第61話

何も言わずに手を引かれる私を気にすることなく先輩は打ち上げをしていた教室から少し離れたところで足を止めた。



「…ここ、誰も来ないから」


そう言って先輩が指を差していた部屋には“資料室”と書かれていた。



これは一体どういう意味なんだろう。


先輩は私の手を握ったままその誰も来ないという資料室に入るとすぐに私を抱き寄せた。



「っ、…」


「……」



それでもやっぱり先輩は何も言わなかった。



これが答えだと思っていいんだろうか。


先輩は大人だからなのかな。


だから、言葉で表現するわけじゃなくこうやって態度で気持ちを表すのかな。



「ナエ…」


小さく色気たっぷりに私の名前を呼んだ先輩は、そのまま私の左耳に口元を近付けた。



熱い吐息が耳にかかって、私の背中はゾクゾクした。





「———…シたい」




思わぬ要求に「あっ、えっ、」と声を漏らした私に、先輩は「シたことある?」と尋ねてきた。



ここはないと言うべきかというずるい気持ちも働いたけれど、きっといざ抱かれてしまえば私にその経験があるのかないのかは先輩にも分かると思う。


それに何より嘘をつくことはできないと思った。




「…あります」


「そうなんだ…いつ?誰と?」


「中三の時…その時付き合ってた人と」


「そっか…じゃあもう痛くはないかな?」


「久しぶりだから分からないけど…はい、たぶん大丈夫です」



私の言った“大丈夫”は“仮に今シたとしても痛くはないと思う”という意味であって、まだまだこれから先輩とその一線を越えることに覚悟なんてできてはいなかった。


けれど、先輩にはもう違う解釈として伝わってしまったらしい。



先輩は私を近くの大きな本棚に押しやったかと思うと、私の左耳からそのまま左の首筋に顔を埋めて遠慮なくそこに舌を這わせた。


「んっ、」


反射的に思わず小さな声を出した私に、ショウジ先輩に完全にスイッチが入ったのが分かった。


短いスカートに遠慮なく入ってきた両手は私のパンツ越しにやわやわと私のお尻を撫でていた。



ここまでくればもうヤるという流れはちゃんと理解した。


好きだと言った手前、それを断る気だって私にはない。



でもこのまま、…立ったままするのかなっ…?



「先っ…」


「ん?なに?」


いつのまにか先輩の両手はパンツに入っていて、直接私のお尻を撫で回していた。


時々その指先が後ろから前側の割れ目に滑り込んできたりして、私は内心気が気じゃなかった。


その度に「っ、」と声にならない声を漏らす私に、先輩の手の動きは加速していくのが分かった。



「あ、のっ…たっ、立ったままするんですかっ…!?」


「うん、いい?床たぶん汚いから押し倒すのはナエが可哀想だし」


「挿れられますかねっ…!?」


「後ろから挿れるから大丈夫」



それからすぐに私を反転させた先輩は、後ろから抱きしめるように私のブラウスに手を入れて私の胸を触った。

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