第33話
顔を離した彼は、息が鼻にかかりそうな距離で「俺の上来て」と囁いて私から離れた。
「…うん」
私はすぐに運転席から助手席の彼の足の上に移動した。
こうなることは、家を出る前からなんとなく分かっていた。
だから私はわざわざスカートに履き替えて家を出たのだろう。
彼に向かい合うように跨った私の腰を彼はしっかり両手で抱き寄せてキスの続きをした。
「っ、…んっ…はっ」
狭くて暗いこの空間は、私の興奮をより煽っていた気がする。
彼はキスをしながら私のスカートから出た太ももをやわやわと撫でていた。
それからしばらくして顔を離した私だったけれど、彼は太ももからいつの間にか私のお尻に両手を移動させていた。
「…彼女と何かあったんですか?」
「……」
「話くらい聞きますよ」
「……」
私のお尻にある彼の手の動きは止まった。
別に私は、彼と彼女の間にあったことの詳しいことになんて興味はない。
ただ、二人が今どれほどうまくいっていないのかは知りたかった。
「…今日、彼女バイトの飲み会なんだ。辞める人の送別会かなんからしくて」
「へぇ」
「“帰り迎えに行くよ”って言ったら“いい”って。…“バイトの先輩が送ってくれるから”って」
「……」
「そいつ男だって。酒も飲むのにさ、そんなのアリ?」
彼は、彼女への嫉妬からくる怒りを私にぶつけていた。
「ありえない…スワさん、可哀想…」
でも冷静に考えて今の段階で状況的にありえないのは彼の方だけれど、今彼はすごく寂しい思いをしている。
私も私で、この展開は自分にとって都合がいいんだからもう今の私達を止める人なんてここには存在しない。
彼が私を求めて、私が彼を求めている。
そんなの、抗えるわけないよ。
彼はそれ以上は何も言わず、左腕で私の腰をしっかり押さえ込んだかと思うと右手の指先の爪で下着の上から私のソコに爪を立てた。
「っ、んんっ、」
その刺激に、私の腰は自然に浮いた。
そんな私の腰を、彼は逃げるなと言わんばかりに左腕でまたさらに抑え込んだ。
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