第23話
私がそんな先輩を遠くから見ていられたのはたったの一年。
先輩は呆気なく高校を卒業してこの学校を去った。
先輩のいない学校なんて、私からしてみればそれはもう色を無くした世界のように味気のないものとなった。
でも、世の中とは実に便利なものだ。
彼の卒業後のことは、SNSで彼の名前を検索すればすぐに分かった。
彼は幸い地元の大学に進んでいて、今は駅前のカフェでバイトをしているらしい。
テニスサークルにも入っているらしく、写真から伝わる彼のキャンパスライフは私の期待を裏切らないほどに輝いていた。
そこにはあの彼女もいた。
彼女の肩を当たり前のように抱き寄せる彼に、私には以前のようなトキメキはなかった。
その代わり、ものすごく嫉妬した。
見かけることすらもできなくなった私の悶々とした日常は、気付けば私の気持ちを大きく変化させていたようだ。
胸がどんよりと重くなるようなその感覚に、私は思わず携帯を閉じた。
でも、次の日には気になってすぐに彼のアカウントを見に行った。
彼は私の存在も知らないだろうから、ちゃっかりフォローもした。
すぐにフォローを返されて、作業のようにされたであろうそれが私にはたまらなく嬉しかった。
それから私はその彼の彼女もフォローした。
彼女は私をフォローし返してはくれなかった。
それに私は少しムカついた。
でもきっとフォローを返されていたところで私はそれなりに彼女に対してムカついていたとも思う。
どちらにせよそれは私のことなんて全く知らないからこその態度だろうし、そんなことになぜか私は勝手に“お前なんて眼中にない”と言われているような気分になった。
それだけじゃない。
私がそれ以上にムカついたのは、彼女がSNSに投稿しているのが女友達との写真やその時のランチの写真ばかりで、彼の姿が全くなかったことだ。
彼のアカウントに彼女の姿は頻繁に登場するのに彼女のアカウントに彼が全く登場しないなんて…
二人が恋人同士であることに対しての嫉妬心は存分にあるのに、彼ばかりが彼女のことを好きなようで私はそれにとてもムカついた。
そしてこの嫉妬からくる怒りがなぜかその彼女に向かっているんだから、人間とは本当に理不尽で不思議な生き物だ。
彼女が私に一体何をしたというのか。
彼のことを好きな私がそこで怒るのも意味が分からないと思えたけれど、そうでもしなきゃ私はこのやるせない気持ちをうまく処理できなかった。
でも今思えば、単純な嫉妬だったと思う。
彼に好かれる彼女が羨ましかった。
これが逆に彼女のアカウントに彼の姿はあるのに彼のアカウントに彼女の姿がなかったら私はきっとこうはならなかった。
むしろホッとしていたかもしれない。
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