第24話
私の憶測では、二人の間に気持ちの差があるのはきっと今に始まったことじゃない。
だって高校の時、彼は隣を歩く彼女をいつも愛おしそうに見つめていたけれど彼女は特に彼に目を向けてはいなかったから。
彼に好かれることは、彼女にとっては特別貴重なことでもなかったのかもしれない。
だからといって冷たい態度を取っているようにも見えなかったけれど、私だったらしっかり彼の方を向いて笑顔を返していたと思う。
もっともっとあの人よりも愛情表現をするし、彼以上に彼のことが好きだという思いもあげられる。
私の方が、絶対に彼を幸せにできる。
…なんて、もうこれは本当の本当に私の勝手な憶測からくる思いに過ぎないのだけれど、そうなのだとその時の私は信じて疑わなかった。
だからきっと、見てるだけで済まなくなった私に突然これまでにはなかった欲が出てきてしまったんだと思う。
頭から離れない彼に、私は遠い場所からSNSを通してとにかく夢中になっていた。
まるで画面の中のアイドルを追いかけているかのようだった。
だから、私が彼の通う大学への進学を決めたのはもう当然の流れだった。
そこに迷いなんてあるわけもなく、私の進路はその一択だった。
その大学で何がしたいとか何か勉強したいことがあるとか、そういうわけじゃない。
ただただ、私は彼に選ばれたかった。
あの人ではなく、私を選んで欲しかった。
顔見知りでもない私がその立ち位置に行くことは容易ではないだろうけれど、それでも今の私なら何でもできる気がした。
高校に比べて、大学は自由度も高い。
学年の差なんてそこまでの障害にもならないと思う。
それに今度の私には二年ある。
その間にどこまで彼に近付けるかは私次第だ。
近付くことさえできたのならば、私は彼に選んでもらえる自信もあった。
だって私はこんなにも彼のことが好きなんだから。
そんな一方的な思いの強さだけでそこまでの自信を持てていた私は、今思えばとても子どもだったんだと思う。
その大学に無事に合格した私は、バカみたいに彼を追いかけてテニスサークルに入った。
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