第15話
それから二ヶ月ほどが経った。
その間にジュンヤくんとは三回会ってその度に体を重ねた。
あとその間にあの元カレからも連絡が二回来て、それにもしっかりと対応した私はその元カレにもまた抱かれた。
一人の部屋はとにかく寂しくて、
どちらでもいいから呼んでくれないかなと私はひたすら願っていた。
でも元カレは“泊まっていきなよ”とは言ってくれないから、どちらかと言うと私はジュンヤくんからの誘いの方が嬉しかった。
二人は私を抱きたい時だけ都合良く連絡を寄越す。
私も私で、家に一人でいたくないから都合良くそれに乗っかった。
そんなある日、
『俺ん家住めば?』
何の前触れもなく、突然ジュンヤくんからそんなラインが届いた。
呼ぶのが面倒になったのかとも思ったけれど、この二ヶ月で三回しか会っていない私に対して連絡が面倒と思うことなんてあるのだろうか。
———…でも、これは願ってもない提案だった。
『うん』
私はすぐにそう返信をして、あのボストンバッグに数日泊まる用の荷物をまとめて自分の部屋を出た。
こういう時にこのボストンバッグはちょうどいい。
元カレの時もそうだった。
“週末泊まりにおいで”
そう言われて、身の回りのものをたくさん詰めていって彼女である自分の形跡を残して帰ろうとしていると思われるのは嫌で、私はこの大きくも小さくもないボストンバッグを選んで荷物は最小限に抑えた。
そして今回もまた、言い出しっぺは向こうなのに本格的に住む気かよと思われるのは嫌で、私はこの大きくも小さくもないボストンバッグを選んで再び荷物を最小限に抑えた。
このボストンバッグは一応有名なブランドのもので、成人した時に母が買ってくれた。
なんで成人祝いにボストンバッグ?
お母さんは、孤独な私のことだからどうせ男の家にでも転がり込むのだろうと思っていたのかな?だからボストンバッグ?…なんて、そんなわけないか。
なんか死んだ風に言ってるけど、お母さんバリバリ生きてるし。
彼の家に来るのはこれで五度目だ。
“住めば?”なんて言われるくらいなんだから、もうそれを数える必要ももうこれからはないのだと思う。
「おー、待ってたよ」
「ごめん、遅くなった」
「全然だよ。おいで」
玄関のドアから顔を出した彼は、笑顔で私の手を引いて部屋の中へと招き入れた。
「ブランドものとか持ってんだ。ちょっと意外」
彼は私が手に持っていたボストンバッグを受け取りながらそう言った。
「誰に買ってもらったの?」
「母親だよ」
「またまたぁ」
訂正するのも面倒になった私は、もう何も言わなかった。
彼も彼でそこに大して興味はなかったようで、ボストンバッグをその辺に置くとその流れのまま私を抱いた。
相変わらず彼はセックスが上手かった。
抱き終わった彼は、いつも言う“泊まっていきなよ”とは言わなかった。
その代わり、「一緒にお風呂入ろうよ」といつもは言わないようなことを口にした。
「貰い物の入浴剤がめちゃくちゃある」と言って、彼は私に好きなものを選ばせてくれた。
私が選んだのは白い入浴剤だった。
お風呂の中でも、彼は存分に私の体を堪能していた。
お風呂の中は私の声がよく響いて、元カレとお風呂で何かすることなんて一度もなかったからすごく興奮した。
その頃には、数時間前まで自分の部屋で感じていた寂しさなんてもう欠片もなかった。
お風呂から出た私達は、お互いの体を拭き合った。
「イチャイチャするの好きなの?」
「うん、好き」
彼はとても嬉しそうだった。
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