第14話

「っ、…だめっ…気持ちいっ…あっ!」


「ここ?」


「んあっ…はぁっ、はぁっ、うぅっ…」


「我慢しないでイキなよ」


私の手を握るその力加減も、私の肌に這わせるその舌も、もうその全てが刺激的で私は何度も甘い声を出しながらイッた。


彼はセックスが上手かったけれど、でもその刺激はきっとこの人だからじゃない。


単に直近で抱かれた元カレとは少しタイプが違っていて、それでもって男の人に抱かれるのが久しぶりだったからだ。


何度イッても求めてしまった。


彼の上で夢中で腰を振る私に彼は「大人しそうな見た目してるのにエロいんだね」とか言ってたけど、見た目どうこうも何も私はエロい女だよ、きっと。


「バックがいい」と言った私に、「いいよ」と言って私の体を簡単に持ち上げて体勢を変えた彼は四つん這いの私の左腕を後ろからそのままグイッと引きながら腰を打ちつけて、その荒々しさに私はめちゃくちゃに興奮した。



私ってMなのかな…


まぁSじゃないのは確かだからMなのか。



「またイッたの?」


嬉しそうにそんなことを言う彼に、恥ずかしくなりつつも私はまた自分から腰をうねらせていた。


私とヤッた人はみんな自分に自信がつくんじゃないだろうか。


“俺ってセックスが上手いんだ!”みたいな。



まぁそもそもこの彼は本当にセックスが上手かったけど。


いつのまにかまた体勢を変えられて、足を伸ばして座る彼に向かい合って跨るように座り繋がる私に、彼は私の胸を舐めながら腰を振っていた。


座りながら腰を振るなんて、男という生き物は器用だな。



「っ、久しぶりって言ってたけどさ、…はぁ、はぁ、…一番最近でいつヤッたの?」


腰の動きを止めて私の胸から唇を離した彼は、少し息を乱しながらそう聞いた。


「はぁ、はぁ、……っ、二週間前、かなっ」


「へぇ…その男と俺、どっちが気持ち良い?」


世の中にはそういうことを聞く男の人がいるというのはたまに聞いたことがあるけれど、本当にいるんだ。


答えが一択であるその質問をする必要ってどこにあるんだろう。



「っ、こっち、」


決まりきった答えを口にした私に、彼は「やばっ」と声を漏らすとそのまま私を後ろに寝かせて正常位に戻した。


本当は名前を言ってあげたいところではあったんだけど、私彼の名前覚えてなかったな…



彼はそこは全く気にならなかったのか、「イッていい?」と言ってそのまま私の腰を掴んだ。



「いっぱい中に出してっ」


「っ、ゴムつけててもそれ興奮するっ…」


それからすぐに腰を振り始めた彼は、少し顔を歪ませるとそのまま私の中の避妊具で全てを吐き出した。








「クラブ、よく行くの?」


パンツだけを履いて煙草を吸う彼は、まだベッドの中にいる私にそう聞いた。


「ううん、普段は全然」


「俺も。そんな俺らが出会ったのってある意味奇跡だよね」


世の中にはこんな安い奇跡があるのか。



結局その日は「泊まっていきなよ」という彼のお言葉に甘えて、朝まで彼の部屋で過ごした。


結局朝家を出る直前まで彼の名前を思い出せなかった私だったけれど、


「ライン教えて」


彼のその一言で、私のラインの友達のところに新しく“ジュンヤ”という名前が追加された。



あぁ、そうだ、ジュンヤくん…



「連絡する」


彼は別れ際そう言ったけれど、特に期待も当てにもしていない私は「うん、バイバイ」と言ってその部屋を後にした。

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