第50話

紙の上を滑っていたペンが止まる。5年。遠い国。晴都がオーストリアに行って帰って来たのも、5年。私は晴都のことを待ってたわけじゃないけど、忘れたことは一度もなかった。



……誰か1人を考えて曲を作ったことはないけど、仕方ないなー。お礼も兼ねて、“そういうこと”にしておこう。その方が歌いやすいしね。



歌詞を書きながら、浮かんだ旋律も書き留める。明日つきまとはなびに見せよう。きっと驚くに違いない。



気づけばご飯を食べるのも忘れて、作業に没頭していた。



書きなぐった歌詞と、旋律の紙を前に伸びをする。



疲れた。疲れたけど、気持ちのいい疲れだ。久しぶりによく眠れそう。

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