第44話
晴都がいないことを確認してから脱衣場に出た私は、借りたタオルで身体を拭いて、さすがに下着は自分のをつけて、置いてあった服を着る。
……あいつの服じゃん。まぁ、お母さんの服を勝手に借りるわけにもいかないか。ていうか、意外と大きくないんだけど。袖とか裾は長いけど、腰周りとかはそんなでもない。あいつ細くない? さてはピアノばっか弾いてるから筋肉無いな?
ドライヤーを借りて、髪を乾かす。窓の外を見れば、まだ雨が降っていた。
ふいに、ピアノの音が聴こえてくることに気づく。あんにゃろう、なんの音楽も聞きたくないって言ったんだけど。
ああでも、このピアノの音は嫌いじゃないな。昔からあいつの弾くピアノの音は優しくて、軽やかで、よく晴れた青空みたいな音だった。あの頃よりももっと澄んだ音になってる。
まだピアノを弾いてた頃、晴都のピアノは何度も聴いてた。勝ちたくて勝ちたくて、自分のピアノとあいつのピアノ、何が違うのか知るために。晴都が弾くピアノは聴き分けられる自信がある。この音を忘れるわけがない。
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