第35話
悪いことをしたら謝る。
人として当たり前のことなのに。
あれから、晴都は私に話しかけて来なくなって、廊下ですれ違ってもあんなことを言ってしまった気まずさから私は晴都から顔を背けて。
レコーディングまであと5日。あんなにわくわくしてたはずなのに、今は少しも楽しみじゃない。
つきまとはなびとの会話も少なくなった。
スタジオに入っても、ろくに挨拶をしなくて。どこかギスギスした空気のまま、練習を始める。
「──ねぇ、今の入りゆきみーちょっと遅かったよ。」
「……ごめん。でもつきまは走り気味だったと思う。」
「分かった。気をつける。あとはなびはもうちょいうちらの音聞いて。」
「ちゃんと聞いてるんだけどぉ。」
楽しくない。全然楽しくない。この音で何を伝えられる? これはなんのための音楽? なんで私はマイクの前に立ってんの? 何を叫びたくてこの曲を作った?
「──……」
私の歌が入るところなのに。
声が、出なかった。
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