第25話

前言撤回。ニヤニヤ笑いながら言ってくるコイツはやっぱりただのクソガキだ。



そんなクソガキが、ふいに真面目な顔をした。




「──なぁ、ピアノはもう弾かねーの?」




誰のせいで──……



一瞬頭に血が上って怒鳴りそうになったけど、奥村晴都からすれば怒鳴られる理由なんてお門違いも甚だしいはずだ。私が勝手に晴都の練習してるところを見て、勝手に挫折したんだから。



そう。全部私の勝手だ。勝手に敵視して、ムキになって。晴都が私に何か言ったのなんて、最初のあの言葉だけ。




「……弾かない。ピアノ弾くの嫌いだったし。」


「ふーん。」


「私の音楽はもうそっち側には無いの。」




私の言葉に対して奥村晴都は何も返して来なかった。用事が無いなら、一緒に歩かなくたっていいのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る