第11話

奥村晴都の顔なんか見ていたくないから、私は部屋で予備のベースで練習しようと思ったのに。




「ぴあの、晴都くん送ってきてあげて」


「はぁー?」




私が送んの? 帰り1人じゃん。




「いいじゃないの。」


「大丈夫ですよ。もう暗いですし。」


「奥村くんもそう言ってるんだしさぁ、必要なくない?」


「送ってきてあげなさいよ。せっかく久しぶりに会えたんだから。」




私の記憶が正しければ、さっき私はコイツのこと「覚えてない」って言ったんだけど。



渋ったけど母さんが「優しくない子ね」ってうるさいしこの間も奥村晴都はずっといるしで、仕方ないから送ってあげることにした。



適当なところで別れて戻ってくればいいよね。ていうか、家知らないんだけど。



無言で家を出る。その私の後ろを歩く、奥村晴都。




「……前歩いてよ。家知らないんだから。」


「送ってくれんだろ?」




やっぱ嫌いだわ、コイツ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る