第12話

前を歩けって言ったのに隣歩いてくるし。鬱陶しくて1人分くらい距離をあける。



なんの会話もない時間。話したくないから、気まずいとか思わないし。




「俺の家ここだから。ちゃんと覚えとけよ?」




晴都が立ち止まったところは、庭の前に大きな窓のある家。あの窓の向こうにピアノがあるんだよね。そこで楽しそうにピアノを弾く晴都を見て私は挫折したんだっけ。



あれ、なんで知ってるんだろう。コイツの家来たの、今が初めてなのに。偶然通りかかったりしたかな。あれはいつの時に見た光景だったっけ。




「ぴあの?」


「……気安く呼ばないで。金輪際あんたを送り届けるつもりないから、覚える必要ないでしょ。」


「そういうとこ全然変わんねーな。昔のまんま。」


「馬鹿にしてる? 私もう帰るから。」


「ぴあの」




この後に及んで何? 早く家入れよ。

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