第4話

音楽なんて辞めてやる。そう思ったのに、どういうわけか中学校で吹奏楽部に入った。そんな部活も練習が嫌で、引退した日は泣くどころか笑顔しかなくて、高校こそ音楽はやらないって決意したのに。



ベースを背負った私が今まさに向かおうとしてるのは、行きつけになりつつある楽器屋のスタジオ。



音楽なんか嫌いなのに、音楽でしか自分を表現できないなんて皮肉なものだ。血は争えないってことかもね。



信号機が青に変わる。電光掲示板の奥村晴都から視線を外して、人の波に流されながら横断歩道を渡る。



日本に帰って来なくてよかったのに。思うだけタダ。心の中で言ってみたり。




「ゆきみーお疲れ。上げてた音源聴いたよ〜。今回の曲もカッコいいねぇ」


「ありがと。つきまとはなびは?」


「さっき来てスタジオ入ってる。」




すっかり顔馴染みになった楽器屋の店長は、私が来る度声をかけてくれる。どの楽器にも精通してるから、うちのバンドはみんなお世話になってる人だ。

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