第2話

ピアニストの母から与えられた名の通り、物心つく前から私はずっとピアノを弾いて生きてきた。



“雪宮武蔵と泉静凪のサラブレッド”、“百年に一度の天才”、“ピアノの申し子”。私を語る名前はその当時いくつもあった。それに恥じないだけの実績だってあった。



奥村晴都に会うまでは。



小学校1年生の時に出場した、小学生のコンクール。母の英才教育を受けてきた私は優勝最有力候補だったのに。彗星のように颯爽と現れたソイツは、無名のくせに1番を勝ち取った。



両親が音楽家でもなんでもない、ただの一般家庭の子供のくせに。文字通りの天才。まさしく神童。



初めて晴都のピアノを聴いた時は、衝撃を受けた。すごい人がいるって、仲良くなりたかった。なのにそんな私に向かってアイツが言ったのは、




「次のコンクールでおれに勝てたら友だちになってやるよ」




あの時のアイツの得意げな顔は今でも忘れない。何が“儚く美しい天才少年ピアニスト”よ。皆見た目に騙されすぎなのよ。ソイツは小さい頃からずっとクソガキだったんだから。

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