第76話



 いきさつを聞いた華菜恋はと言うと……。


 證本人を目の前にして、「このような鬼に本当に嫁いで大丈夫なの?」と芽衣胡に詰め寄る。

 しかし幸せそうな芽衣胡の表情に納得すると、華菜恋は京都に戻ると言った。


「どうして? 万里小路のお屋敷に帰らないの?」


 そう聞く芽衣胡に、華菜恋は乙女の表情を見せる。


「実は京都あちらに意中の方がいらっしゃるのよね」

「まあ!!」

「證様とは違ってとてもお優しい方なのよ」

「あら? 證様はとってもとってもお優しいわよ!」

「ふふ、それは芽衣胡にだけね」


 同じ顔を寄せ合い鏡のように笑い合うと、華菜恋は膝を證に向けた。

 證は姿勢を正す。妹をよろしく頼むとでも言われるのだろうと感じたのだが、華菜恋の目は鋭く證を射てくる。


「證様、芽衣胡を泣かせたら許しませんから!」

「ああ、もちろんだとも」


 華菜恋は目の前の男を真っ直ぐ見上げた。目付きはやはり怖いけれど、悪い男ではないと分かっただけ良かったと思う。


 そして華菜恋は京都にいる武満の元へ向かった。

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