7、パーティー
第59話
1
眠れぬ夜を明かした芽衣胡は離れに運ばれた朝食を證とともに摂り、仕事に行く證を見送った。
離れに戻ると松子のいないことを確認した芽衣胡は伊津に「大変なの!」と近寄る。
「いかがなさいました?」
「ぱあて、ぱっ、パーティがあるのですって!」
「パーティーですか?」
芽衣胡は首を縦にぶんぶんと大きく振る。
「ダンスもあるって……華菜恋は成績が良かったって」
「そうです。お嬢様は誰よりも優雅に踊るのが得意で……、えっ!? 芽衣胡様ダンスの経験は?」
悲しい顔の芽衣胡は首を左右に振る。
「大変ではないですかっ!!」
伊津が大きな声を出した時、松子が離れに顔を出した。
「伊津さん、声が外まで聞こえますよ。華菜恋様宛てのお手紙をお持ちしました」
「誰からかしら?」
「親戚の方、でしょうか?」
差出人は京都にいる万里小路某だと松子は言いながら伊津に渡す。
「それではわたしは仕事に戻ります。失礼いたします」
松子が出て行くのを見届けて、伊津は手紙の封を切る。
「京都からと言うことはお嬢様が身を隠しているご親戚の家からでしょうね。読んでもよろしいですか?」
「もちろんよ。だってわたし字も読めないのだから。伊津お願いするわ」
首肯した伊津が便箋を開く。華菜恋に何かあったのだろうかと、芽衣胡は生唾を飲み込んだ。
「これはお嬢様の手ですね。華菜恋さま、とありますが、これは芽衣胡様宛てでしょう」
うん、と肯いて続きを待つ。
「『わたくし思い出したのだけど、祝言の後に松若汽船関係者に向けた結婚お披露目のパーティーがあるのよ。だけれど行くと返事しては駄目よ。必ず、絶対に参加したくないと駄々をこねなさい。絶対よ!』」
そう書かれております、と伊津は締める。
「お嬢様のお手紙、ひと足遅かったのでしょうか? もう参加されることになっているのですよね?」
「断って良かったの? え、でも、断るなどという選択肢は初めからなかったわ……。伊津、どうしたらいいのかしら?」
「お嬢様に断われなかったとお返事してみましょうか? 何かお知恵をいただけるかもしれません」
「そうね……、そうしましょう! 伊津すぐに返事を!」
伊津はすぐに返事を書いて手紙を出した。その手紙が華菜恋の元に届いたのは5日後のこと。
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