第55話
2
会話もなく目的の
菱越百貨店は5階建て。
1階には、服飾雑貨部と宝飾品部。
2階には、美粧部と化粧品部。
3階には、呉服部。
4階には、婦人服部と紳士服部。
5階には、文具部と、そして大食堂がある。
芽衣胡は初めて乗る
向かった先は婦人服部。
「お洋服のお誂えでしょうか?」
展示しているものはもちろん全て洋装。流行のモダンなファッションに芽衣胡は見えないながらも圧倒され、口が半開きになっていた。
「妻の採寸をして欲しい」
「かしこまりました。奥さまはこちらにどうぞ」
しかし芽衣胡には何も聞こえていなかった。
――わあ……、なんて夢のような所なのかしら。
まさかわたしのような者が百貨店に入ることが出来るなんて、本当にしんじられない――と、芽衣胡の頭の中こそ夢の中に入っていた。
「華菜恋」
「華菜恋様?」
二人の呼び掛けにも、芽衣胡はまだ夢の中。
様子を見に来た他の店員が「いかがされましたか?」と聞いてくる。
「採寸に連れて行ってくれ。それからカタログを見たい」
「それではこちらに掛けてお待ちください。カタログをお持ちいたします。奥さまはあちらで採寸をいたしましょう」
「ああ」
一人の店員はカタログを。 もう一人の店員は自分より遥かに背の低い芽衣胡の腕にそっと手を添え、反対の手で背中を押して移動させた。
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