第23話
「ねえ伊津、ここは何の部屋?」
「何の部屋と言われましても、ここは芽衣胡様と證様のお部屋ですよ」
「えっ!?」
「驚くところですか? ちなみにここは離れですが、本邸とは繋がっております」
「離れ……、鬼のアカシとわたしの部屋? 同じお部屋?」
「芽衣胡様。鬼のアカシだとしても祝言も終わりましたので『旦那様』とお呼びください」
「だんなさま……。あ、そうだ伊津」
「どうしましたか?」
「握り飯を用意したいのだけど」
「握り飯ですか? あとで松子さんに聞いてみましょう。何も召し上がれませんでしたか?」
「うん。緊張して。それにきらびやか過ぎて器が見えにくくて、盃を取ろうとしたらね、大根のなますが入ったお皿だったの」
「まあ」
――でも旦那様が教えてくださって。
そう言おうとした言葉は松子の声に消えた。
「お風呂が整いました」
「ありがとうございます。でもわたしが先にお湯をいただいていいのかしら?」
芽衣胡は背筋を伸ばして華菜恋を真似して声を出す。
「本邸の皆様は本邸にあるお風呂に。華菜恋様は離れにあるお風呂をお使いください」
「旦那様は?」
「證様は本日は本邸の方に入るそうです」
「そうなのね。分かったわ、ありがとう」
松子に案内され、部屋の裏手にある浴室へ向かい、芽衣胡はゆっくりと湯に浸かったのだった。
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