第19話

「ああ、本当に楽しみだわ! 證さんと華菜恋の子ども! きっと美しくて賢い子どもが生まれるのでしょうね!」


 梅子は若い娘のように心を弾ませている。本当に二人の子どもが生まれるのを心待ちにしているのがその声色から芽衣胡にも伝わる。


 楽しみではないが芽衣胡も同じ気持ちだった。やや子を身ごもり、無事に産んで一刻も早く華菜恋を安心させてやりたかった。

 無事にやや子さえ生めば芽衣胡は自分の役目は終わりだと考えていた。


 梅子の血と、清矩の血が合わさった証拠こどもが生まれてはじめて二人の約束が成就するのだと。


 やや子を産んだのち、どうにかして離縁してもらえるようにしようと芽衣胡は考えている。そして離縁が成立したならば華菜恋をこちらに呼び戻すつもりでいた。

 いつまでも華菜恋に隠遁生活を送らせるわけにはいかない。華菜恋がこちらに戻ってきて心安らかに暮らせるように取り図ることを芽衣胡は考えている。ただその方法はこれからゆっくり考えるつもりなのだ。


 梅子は證の手を握り、ありがとうねと何度も頭を下げ、よろしくねと念を押すように微笑む。

 證が首肯すると梅子は機嫌よく自席へ戻っていった。

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