第93話

「初めは誰でもよかった。恋愛が出来れば。婚約者との結婚は嫌だけど、一通り遊んだら諦めもつくと思った。」




泣きながら流歌は言った。




「でも、本気になっちゃったの……本気で正樹が好きだ……どうしようもないくらい。」




流歌はいつもではありえないくらい真面目な顔をして、そう言った。




「正樹と連絡を取れないように、スマホを取られて、部屋にほとんど幽閉状態だったの。やっと学校に来れるようになったけど……もう……ダメかもしれない……」




私は何も言うことが出来なかった。





家のための婚姻。





これは私たちお嬢様にとっての務めだから。




「なんで、何も言ってくれないの?正樹との事応援してくれないの?沙妃は恋愛より家の方が大事だと思うの?」




声を荒らげて泣きながら言う流歌に




「そんなこと……」




「沙妃は、好きな人がいないから家の方が大事だと思うのよ!優しい父親と母親と弟の元で育ったからそう思うのよ!」





「そんなことないよ!流歌!流歌のこと応援してるよ!」

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