第88話

私は思ったよりも落ち着いている自分に心底驚いた。




浩一の誕生日パーティの日に婚約者の方から聞いていたからだろうか。




雨が強かったせいで別宅に着くまでに体は濡れてしまって、別宅で待っていた榊にタオルをもらい軽くふきお風呂に入った。




お風呂から上がるとメイド長の加島さんがあったかいミルクティーを準備してくれた。




「加島さん、婚約が決まったわ。」




そう言うと、加島さんは少し複雑な顔をして




「それは、おめでとうございます。といっても大丈夫なのですか?」と聞いてきた。




加島さんはいつも私を心配してくれる。




「うん、大丈夫だよ。家のために出来損ないの私ができる唯一のことだからね。」




この婚約は私からしたら喜ばなければいけないくらいだ。




私にはもったいないくらい大きな家との縁談。





少しくらい貢献しなければ生まれてきた意味がまるでない。

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