第87話

部屋は二人きりということもありとても静かだ。




外は大雨が降り、雷が鳴っている。




「お前の婚約者が正式に決まった。高島家の長男だ。うちの家の相手としては申し分ないだろう。」




「高島家ですか・・・」




うちと同じでホテルの経営をいていて、ほかにもデパートやショッピングモールなど幅広く業績を伸ばしている家だと聞いたことがあった。




「今度顔を合わせる機会があるから。粗相のないように。」





「はい。」





父はそう言うと他には用事が無いようだったので部屋から出た。




この調子だと私の結婚は高校の卒業と同時であることがうかがえた。




外を見るとさっきよりも雷はひどく、いったん外に出ないと行くことのできない別宅に帰るのを億劫に思いながら傘を差した。





「恋愛なんてしたことないのに結婚なんて笑っちゃう。」




むしろ好きな人がいないほうが気楽なのかもしれないと思った。

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