第82話

「ありがとう、榊。楽しみにしてる。」




そう言って小さく笑うと、ほっとしたように微笑んだ。




「珍しいものをみれるものね。」




そういいながらお姉さんは笑っていた。




「あの、理生がね。感慨深いわ。」




「うるさい。」



さっきまで優しかった榊はお姉さんを見ていつも通りの榊に戻った。




「お嬢様、帰りますよ。」



そういわれて、急いで残っていたパンケーキを口に詰め込んだ。




「あー、馬鹿。口にチョコついてる。こっち向け。クソガキ。」




いつもみたいに悪態をつきながら、私の口の周りに付いたチョコをぬぐった。




「へへへ」と私が笑うと、なんだこいつと言いたげな顔で私を見下ろしてきた。




お父様や、お母様にやさしくしてもらったことはないけれど、私には榊がいる。




口にチョコが付いたらぬぐって「馬鹿。」と言ってくれる人がいる限りまだ私は頑張れそうだと思った。

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