第81話

優しく聞かれても、なんて答えていいかわからなかった。





「ミュージックプレーヤーがね・・・壊れちゃったの・・・落として、踏まれて・・・使えなくなっちゃった。」





小さく笑う私を見て、榊は「馬鹿。何落としてんだよ。」といった。




ボロボロになったミュージックプレーヤーを握りしめると




「今年の誕生日。」




「・・・・・え?」




「今年の誕生日に、俺からプレゼントしてやる。だから、笑え。な?」




眉を下げながら言う彼は、私が泣いていた理由が本当はミュージックプレーヤーが壊れたからではないということに気が付いているんだろう。




そして、何て言ったらいいかわからなくて、理由が言えないことも察しているのだと思う。




彼はとても察しがいい。





いつも私のことはお見通しなのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る