第75話

あの小さな女の子にとって私は悪役なのだろう。




自分の母親を奪う悪い奴らの娘。





父と母は幼い頃からの許嫁で、将来が約束されていた。





でも、お互い他に愛する人がいたため、実際は作り物の夫婦。





後継ぎさえ生まれれば役目が終わればよかったが、そういうわけにもいかない。





お互い自分の家のために離婚はできないのだ。





でも、本当に愛している人を諦められない父はほとんどを愛人の家で過ごし、母も父ほどではないがあっちの家族と過ごしているらしい。




私の家は複雑なのだ。





でも、私だって・・・・





こんな生活楽しいわけないじゃない。




幸せなわけないじゃない。




本宅暮らすことすら許されない待遇、家族と目があえばまるで汚いものを見るような目をされる。





私はあの少女みたいにお母様やお父様に笑顔が向けられたころがない。




壊れた、ミュージックプレーヤーの電源をつけてみたけどつくはずもなかった。

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