第73話
数年前、母は一年ほど行方をくらませたことがあった。
体調が悪く入院していると聞いていたが、別の男性との間に子供ができていたことが今わかった。
私の前では見せない幸せそうな顔。
持っていたミュージックプレーヤーを落とした。
カシャンという音を聞きお母様はこっちを見た。
「沙妃・・・・あなた何でここにいるの?」
さっきの笑顔はない。
憎悪に満ちた顔がそこにはあった。
「ごめんなさい・・・ちょっと散歩に・・・」
うつむきがちに言うと、落としたミュージックプレーヤーが踏まれた跡があった。
のんきにも、これは壊れているな。もう使えないや。と思った。
小さな女の子が私に近づくと、白いTシャツにアイスを投げつけられた。
「あなたママを取る人ね!ママを返して!大っ嫌い!!!お姉ちゃんは、お金持ちで、幸せでいいじゃん!!!私にはママとパパがいればいい!なんで意地悪するのぉ~」
そういいながら泣き出す子供をあやす、男性とお母様はさっきのような幸せそうな顔はしていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます