第59話

「今年は海なんですか?」




「そうみたい。」



家に帰ると榊に聞かれた。



家にも連絡がいっていたらしい。




篠田がお茶を持ってきてくれて「楽しみですね。」と笑って話しかけてきた。




「そうでもないよ・・・水着を着るの嫌だし、暑いのも苦手だし・・・それに、肝試し大会だよ・・・嫌になっちゃうよ。」




「それは、災難ですね。お嬢様は怖いものが苦手ですからね。」




流歌の前では見栄を張ってお化けを信じていないといったけど、本当はすごく苦手だ。




ドラマや映画が好きでしょっちゅう見ている私だけど、ホラーだけは見ることができない。観るときは榊と一緒に観る。




嫌いだけど、夏になったら観ないといけないような気がして毎年榊をつき合わせている。




でも、毎回私を脅かしいて楽しんでくるから、榊とは本当は一緒に観たくないのが本音だけど、ほかに一緒に観てくれる人がいないためしょうがない。





「海なんて由々しき事態ですね。お嬢様。」




いきなりハッとした顔で榊が言ってきた。



「何が?」と聞くと




「お嬢様胸がないですから・・・ご友人と比べたら・・・まな板・・・絶壁・・・」




「怒るわよ?だから、フリルがいっぱいついた水着を着るんじゃない!!!もうっ、篠田!榊を怒ってやってよ!こいつ専属執事失格よ!」




そう言うと篠田は楽しそうに笑いながら空になったカップにお茶を入れた。




「本当に二人は仲がよろしいですね。」



どこがよ!!!篠田ったら旅行に行って、温泉で脳みそ溶けちゃったのかしら!びっくりする!




「本当に、篠田は榊に甘いんだから・・・」




頬を膨らませる私を見て篠田はまた笑った。

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