第54話

大丈夫といいながら必死で吐き気を我慢した。




「あの、ちょっと体調がよくないので休憩室で休んできますね。パーティー楽しんでください。」




そういいながら彼のもとを離れ、トイレへ向かおうとした。




もうだめ、吐きそう。と思い、うずくまった瞬間に「沙妃お嬢様!」と声がした。




顔をあげるといつものように榊がいた。




「どうしたんですか。急にいなくなったと思ったら。」





「さかきぃ・・・気持ち悪い・・・」




小さな声でそう言うと、私を抱きかかえ早足で歩いた。




「我慢できなかったら俺のスーツに吐いていいので、我慢しないでください。」




そういわれて、我慢の限界だった私は少し吐いてしまった。





ホテルの一室を借りてそこに入ると「何があったんですか?」と聞かれた。




さっき汚してしまったスーツは新しいスーツに替わっていた。ここのホテルにはスーツも売っているため適当に用意することができたのだろう。




私も榊に新しい服を用意してもらってそれに着替えた。




「水と間違えて、お酒を飲んじゃったみたい。」



笑いながら言うと




「この不良が」と言われた。

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