第43話

タクシーに乗り、流歌は私の手を握った。




「私・・・榊のことを縛り付けてる。」





「きっとそんなことない。あの女の人が勝手に言っているだけだよ。」




違うんだよ。流歌・・・・




私、榊とした約束を思い出してしまった。




私は、彼を約10年縛り続けてしまっていた理由を思い出してしまったのだ。




10年前の記憶をすべて思い出したわけではない。



でも、10年前に彼がくれた言葉だけ、鮮明に思い出した。




「私・・・忘れてしまっていたなんて・・・最低だ。」




そのまま、家に帰ると篠田に驚かれた。




学校が終わるよりもだいぶ早い時間に帰ってきた私を見て、心配そうな顔をした。




流歌が「体調が悪そうだったから、早退して私が付き添ったんです。」と説明をし、私はその間何も考えることができなかった。




ふと思い出したように「篠田、榊に今日は迎えいらないって伝えといて。」というと部屋に向かった。

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