第42話

「あんた、そのタバコどうにかならないの?ずっと吸っているじゃない。」




「うるせえな。ほっとけ。」




面倒くさそうにも言葉に応じるところをみると、やっぱり知り合いのようだ。




「それにしても、もう10年ね。笑っちゃう、あんたが黒髪なんて。」





「あー・・・」





「いつまでそうしているつもりなの?」




「何が?」




「何がって、分かっているんでしょ?あんた、いつまであのお嬢様と一緒にいるつもり?あの子ももう高校生、小さな子供ではないのよ。もう、やめたらどうなの?理生さえよかったらうちで雇うわよ。」




榊を理生と呼ぶ人を見たのは初めてかもしれない。やっぱり親しい友人、もしくは彼女かもしれない。





「別に、いいよ。」




彼女の申し出をあっさり断る榊に、怒ったように言った。





「いつまでも、あの子のそばにいられないことくらいわかっているんでしょ?高校中退のあなたを雇ってくれるところなんてそんなにないんだからね。分かってるの?」





「分かってる。でも、一緒にいられなくなる日まで、一緒にいるって俺は決めてるから。そうやって約束したから。」




「理生はそうやって、あの子に縛られて生きていくの?」





これ以上聞くことができなくて私は、流歌の手を引っ張って走って道路のほうへ向かって、タクシーに乗った。

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