第42話

数分経つとその身体は操られた人形のように指先をピクッと動かす。



その身体は生気を感じさせなかった。



目に色を宿ることは無い。



操られる屍のよう。



身体の周りは黒い怨みのオーラが漂い、怨みは次第に大きくなっていく。




「ウフフ。やっと手に入ったわ。私の新しいカラダ♪」



妖しく笑む顔は少女。



幽霊は結の身体を乗っ取ったことを意味した。




「お前…………そいつの身体を返せ。あいつはどこだ?」



「安心しなよ。この子は眠らせてるだけよ。まあ、いつ目を覚ますのか、この体を返すかどうかもわからないけどね?」




クククと笑う少女は普通の幽霊から悪霊となっていく。




「チッ。厄介なことになったものだ。まさか、身体を乗っ取られるなんてな…………」



「その顔、好きよ。私を醜く見る怨みある顔が♪」



「俺の専門外だと言うのにな」




呟いた男の子は首に下げるネックレスを揺らし、拳に熱い火の玉を出した。



結の身体を纏った悪霊は葬式の後、飲み会で盛り上がる家のちゃぶ台に立つ。




「そいつの身体から出ていけ!」




四神一族特有の姿、朱雀の姿に変化し、くちばしから火の粉を出した。



悪霊は生身の人間の身体を纏っているせいか、火傷を覆った。




「攻撃すればいいわ。痛みを受けるのはこの子なのだから」



「チッ。そこが狙いか」




あたりの人間は朱雀に驚き、失神するものや奇声をあげるものもいる。



その中で結の姿をした悪霊に近づいたのは結の義兄の圭介。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る