第85話

「ごめんごめん。おすすめスポット教えてもらうんだったのに」


「エリはいつもこうペラペラと。話し始めたらいつも止まらないな」


「サトル、うっるさい! あっ、あのね、この人、こんなんでも私の旦那なんだ。つい最近籍入れたばっかりだから自慢しちゃう」





旦那さん?


いかにもその単語を言い慣れていないような振る舞いをする。


まるで友達カップルみたいだなーって思っていたんだけど、すごい、素敵だ。




「ふふっ、それになんと、お腹には赤ちゃんもいるの」


「え!?」


「まだ3ヶ月なんだけど、せっかくだから安産祈願も兼ねて参拝しようかと思ってね」


「……す、すごい、おめでたですね」




とっても幸せそう。


仲睦まじくて、お互いのことは何でも理解しているような、そんな強い結びつきが感じられる。




「そ、それじゃあ、なおさら張り切っておすすめを紹介しないと、」


「ふふっ、ありがとっ」




赤ちゃんがどうか無事に産まれてきますように。


たまたま隣に座ってきただけの人なのに、すごくすごく応援してあげたくて仕方がなかった。



それに、



──エリさんがお腹を撫でている場面をみると、無性に泣きそうになったのだ。

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