第83話

またため息をつくサトルさんだけど、




「でも、東武線だと快速で浅草まですぐですよね?」




そんなに行きにくくもないような気がするけど、どうなんだろう。


間に割り込むと、サトルさんとエリさんは2人で目を合わせた。





「ああ〜、それね、確かに便利だったんですけどねえ」


「……え?」




一拍おいてから、エリさんが浮かない顔をした。



「前は私もよく使ってたんですけど、4月の下旬?…くらいに廃止されちゃって。今は南栗橋みなみくりはしまでしか行かなくなっちゃったんですよね」


「え……、うそ、そんなはずは」


「あれ?知らなかったですか?車内アナウンスでよく流れてますよね?あの快速楽チンだったから好きだったのになぁ〜、代わりに急行が新設されたんだって」


「へ、え…」


「東京方面に行きたければ、栗橋でJRか、南栗橋で一度メトロに乗り換えなきゃいけないのがなんかもう面倒くさくて」




埼玉県久喜市にある南栗橋駅へは、最寄りである新大平下駅から三十分強だ。


日比谷線、半蔵門線、田園都市線直通列車が当駅以南で運転している南栗橋は、北関東と都心部の重要な橋渡し役をしているのだけれど…。



知らなかった?


なんで?


この違和感は、なんだろう。




「なんて言ったっけ、ダイヤ、なんちゃら…」


「…ダイヤ改正」


「そうそう!サトル賢い!」


「こんなの常識だろ」




はぁ、と溜息を吐くサトルさんの言葉にもちょっと引っかかった。





常識?


毎日使っている私は何故知らないのか。あんまり考えたくはなかった。

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