第64話
満面の笑みを浮かべているミユちゃんに頬が緩む。
「ごめんなさい…。勝手にペラペラと、」
伺うように老婦人を見た。
彼女はしばらくギュッと口を結んでいたものの、私の視線に気づくやいなや「…ありがとね」と頭を下げてくれた。
「おねーちゃん、これに絵描いてほしい!」
すると、隣からグイグイとスケッチブックが押し付けられる。
ミユちゃんだ。
「ええ?」
「お願い!オネーチャンの絵が見てみたい!」
「……私の?」
「うん!宝物にする!」
……宝物、か。
ハハ、と苦笑するも、押しに負けてスケッチブックと鉛筆を受け取ってしまった。
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