第63話
これはハルナさんがポロッと口にしていたことの続きだった。
正面から無言の視線を感じたけれど、何をしてくるわけでもない。
大口を叩いてしまったけど、無気力な日々を送っている私が本当はこんなことを言えた義理じゃないのだ。
マンネリ化した日々。
ポッカリ空いた穴。
けれど、このボックス席に座ることで、少しずつ色を取り戻してきた。
絵を教えてくれた先生が幼い私に何度も何度も口を酸っぱくして言い続けてきたこと。
それが今になってこんなにも胸に響く。
「あと友達が馬鹿にしてきたらさ、逆に胸を張るべきだと思うよ」
「え?何で?」
「だってさ、やりたいことがあるって素敵なことじゃん。夢があるって最高じゃん。一心不乱に頑張ってるミユちゃんを見て、きっとみんな感化されるよ。ミユちゃんってなんだかカッコイイって」
フフ、と口角を上げると彼女はキラキラした眼差しを私に向けてきた。
「ほんと?!」
良かった。
どうやら胸のうちにあったモヤモヤは晴れたみたい。
「うん。だから、学校も行って、絵も頑張ること!ミユちゃんならできるよ」
「……うわあああ」
「……って、なんだか私もいろいろ思い出したよ。ありがとうミユちゃん」
「ううん!こちらこそありがとうっ!オネーチャン!」
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