第59話

こうして長いこと乗車していくうちに、ハルナさんという男がどんな人間なのかが浮き彫りになっていく。


はじめはヘラヘラしたふざけた人だと思ったかけれど、今は違う。



泡沫のように消えてしまいそうな人だと思う。


──太陽の光に溶けてしまいそうに。








「じゃあ、おにーちゃんは…」


「なんてね」


「へ?」


「ここから先は、そこのおねーちゃんに聞いてみな?」







「…って、えっ?ちょ、」






……と、辛気臭いことを脳裏に過ぎらせていた私に火の粉が飛ぶ。






「お絵描き、このおねーちゃんも好きなんだってさ」


「えっ?!そうなの?!」






途中で話すのが怠くなったのか知らないが、ハルナさんは唐突に私に話を振ってきた。


自由奔放。急に語り始めると思いきや、何の前触れもなく話し終わる。


────ちょっと!








「ま、まぁ…そう、だけど」




表では当たり障りのない返答をしているものの、内心彼に突っかかりたくて仕方ない。


って、ああ、また外を眺め始めて自分の世界の中に入り込んでしまっているし。

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