第22話

「ダメですよ。……まったく分かってないですね、」




あり得ない。


まるで飴を口に入れてすぐに噛んでしまう子どもみたいにあからさまだ。



もぐもぐ顎を動かしていたハルナさんは「え?」と間の抜けた返答をする。





「アーモンドは、一番最後に味わうものじゃないんですか?」


「…え」


「最初にチョコを口の中で溶かしきってから、そのあとにアーモンドの香ばしい味を楽しむの、これが通の楽しみ方」


「…」


「それじゃあアーモンドチョコの良さが半減しちゃいますよ。こういう風に食べる人を見ると我慢できないんですよねえ」




私にはアーモンドチョコに変なこだわりがあった。


途中でアーモンドを噛んでしまうと、味の変化を楽しめるというせっかく良さが失われてしまうから許せないのだ。




「だから、……って、え………」




こんなことをハルナさんに言ってもしょうがないんだろうけど、とあらためて顔をあげる。


けれど、その先の言葉は詰まってしまった。



だって、今までヘラヘラ笑っていたハルナさんが、頬にひと筋の青筋を浮かべ──静かに泣いていたからだ。

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