第20話

つい反射的にパクリ、といただくと私の唇に少しだけ彼の指が触れる。


男らしいゴツゴツしたものではなく、真っ白で、しなやかで、折れてしまうくらいにすごくほっそりした指だった。





「おいし?」




丸眼鏡の奥の瞳は優しく揺れている。


端正なつくりをしているお顔だからか、マジマジと見つめられてしまうと居心地が悪かった。




「おいしい…です…って、なにするん、」


「俺にもあーんしてほしいな」


「聞いてないし、嫌ですし」


「えーケチー」


「可笑しいでしょう普通。知らない人と食べさせあいっこなんて」


「ふうん、そうか」




ガタンゴトン。


賑やかな乗客たちの笑い声が聞こえてくる。



そうやってあからさまに残念そうな顔をされるとバツが悪い。




「やっぱ…いりますか?」



──つくづくハルナさんは、変な人だ。





「えっ?」


「なんだか可哀想に思えたから」


「ヤッター」

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