第16話

宇宙人?


未来人?


魔法使い?




まさかね。そんなのあり得ない。


ただのストーカーの線が一番濃厚だろうけど、どうやら私に危害をくわえるつもりはなさそうなのでとりあえず一安心なのか?


不思議なことに、この人をそこまで畏怖することはなかった。




「学校サボって、ぶらり一人旅?」


「まあ、はい」


「うんうん。いいね、不良学生だ」


「……あの、」


「分かるよー。たまーにさ、ふらっとどこか遠くに行きたくなる時ってあるんだよな。旅っていうのは、なんだか非日常感があって俺も好きだよ」


「…」


「ほら。なーんにも変わらない日々って飽き飽きするしさ」




ハルナさんはよくペラペラ喋る。


すぐに打ち解けられるわけない。ハルナさんの方が変なのだ。


──まったく、この人はいったいどの駅で降りるのかな。はやくどっかに行ってほしい。





「そうそう、いろは──」


「あの、それ、馴れ馴れしいんですけど」


「それ?」


「名前を呼び捨てにされるの。初対面なのに」





すると、ハルナさんはくつりと笑った。





「呼びたいから呼んでる。ただそれだけの話だよ」


「変なの」




ハルナさんの丸眼鏡が光った。


もさっとしている長い前髪の奥に綺麗な瞳がある。




「そうだね……」




けれど、またすぐに目を細めて肩を揺らしていた。


ヘラヘラしていた雰囲気を少しだけ引き締められた気がしたが、なんでもなかったみたい。





「もう一口イチゴオレちょうだい」




なんかもう、友だちみたいになってないかな?


馴れ馴れしい彼の態度にも、途中からもうどうでもよく思い始めてしまった。

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