第15話
私のことをおちょくって遊んでいるみたい。
面識のない正体不明な男が何故か私の名前を呼んでくることも、満更でもない顔で一口ジュースを貰うことも、…どう考えても変。
だけど、席を変えようと思わないのはこの人の顔が整っているから……?
めっちゃめちゃ怪しいけれど、マイペースな会話に付き合っていくうちに私の警戒心はだんだんと薄れていっている。
これがおじさんだったら100%通報しているだろう。
「そして、絶賛学校をおサボり中だということもお見通しだったり」
「えっ!」
──なんで。今は制服なんて着ていないのに。
童顔であるにしろ、私が学生だって何故一発で分かったんだろう。
この人、何者。
やっぱりストーカー?
「いつも学校に行く時にこの時間の電車に乗ってるって、まさか知ってたんですか?」
「うん、まあね」
「それってつまり」
「──で、何処行くの? ほーん、東照宮か、いいねいいね。"見ざる言わざる聞かざる"でゆーめいだよね、そこ」
しれっとした顔で私が広げていた観光マップをシゲシゲと覗き見てくる。
日光に詳しいのか何やらウンチクを語り始めるし、ほんとうにあなたはなんなんだ。
「ちょっと、今はそんなことは」
「ほら。急に妖精が現れたと思ってくれててもいいから。それと大して変わんないんじゃない?」
「はあ? 意味分かんないですから!」
「まあまあ、細かいことは気にしないでくださいよ。いろはさん」
そんな、無茶苦茶な。
妖精なわけないじゃん。
「あ、これ!このお店すごい美味いんだよね!分かる!俺大好きここ!」
……聞いてないや。
ハルナさんは観光マップに夢中になっている。
この人はよく日光を訪れているんだろうか?
私に構うことなく食いついているところを見ていたら、なんとなくそう思った。
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